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2018年6月18日更新

【健康読書vol.7】乳がん闘病記「ちびといつまでも ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節」

子育て真っ最中のママに、ある日突然宣告された「乳がん」。長く続くがんの治療を乗り越えた一家の1年6ヶ月に及ぶ闘病記録のコミックエッセイです。分かりやすいイラストや専門家のコメントもあるので、乳がんの知識の少ない方にもおススメの一冊です。
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コミックエッセイ ちびといつまでも -ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節

今や2人に1人「がん」になる時代。がん自体、もはや珍しい病気とは言えなくなってきていますが、未だに私たちが「がん」という響きに他の病気にはない「恐怖」や「不安」を強く感じるのは、やっぱり「がん」が「命」に直結するイメージがあるからではないでしょうか?

2017年、人気タレントの小林麻央さんが闘病生活の末、乳がんで他界されたというニュースは、多くの女性にとって大きな衝撃を与えました。

女性が罹るがんの中でも一番多い乳がんは、女性としてのアイデンティティーにも関わるものでもあり、身体や心へのダメージは、計り知れないほど大きいものです。

私たちの生活に大きな影響を与え、一変させてしまう可能性がある病気でありながら、それでもなお「怖い」という思いから、ついつい目を背けたくなってしまう乳がん。医学の進歩がめざましい中でもその患者数は減るどころか、今もなお増え続けています。

今回、Calooマガジン編集部では、多くの方に乳がんについて知ってもらいたいということから1冊の乳がん闘病記をご紹介することにしました。

3人のお子さんの子育て中にがんが見つかり、一年半にわたる闘病生活を描いた「ちびといつまでも ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節」(以下、「ちびといつまでも」に省略)は、カラーの4コマ漫画を中心に描かれた異色のコミックエッセイ。

可愛いキャラクターが登場する漫画形式なのでさらっと読むことができますが、乳がんの専門知識はもちろん、なかなか周りからでは分からない闘病中の生活や家族の気持ち、さらには気になる費用のことまで幅広く紹介されていてとても読みごたえがある一冊。この本のおすすめポイントをまとめました。

(参考)国立がん研究センター 最新がん統計(更新・確認日:2017年12月08日)
※日本国内のがんの統計の最新情報を見ることができます。

「ちびといつまでも」ってどんな本?

「ちびといつまでも」は、乳がんを患った妻(通称:ママンさん)の闘病の様子を、漫画家であり、イラストレーターでもある柏原昇店さん(通称:パパンさん)が描いた大人気ブログの書籍版です。

ガンガン乳がん闘病記編!

(画像引用)新ちびといつまでも おてんばムスメ編 柏原昇店
※この本の元になっている人気ブログ。現在は、続編である「おてんばムスメ編」が公開中です。

ストーリー紹介

もともとは作者さんがご夫妻の育児を紹介する4コマ漫画から始まったこのブログ。2016年5月のママンさんの乳がん発覚を機に、第2弾として「乳がん闘病記編」がスタートしました。

9歳、5歳、1歳半という3人の子育て真っ最中に大豆サイズのしこりを発見し、突然始まった闘病生活。初めての受診から信頼できる先生を見つけるまでの紆余曲折や実際の乳がん治療の流れ、その間のご夫妻の心の葛藤や、お子さんの様子などが細かく描かれています。

「乳がん」という難しいテーマですが、作者さんの人柄と明るい画風(ママンさん以外は動物のクマで描かれており、時々人間に戻るという設定も面白い)のおかげで、深刻になり過ぎることなく読み進めることができ、登場する三人のお子さんの可愛らしさにも心が癒されます。

しこり発見

(画像引用)ちびといつまでも ガンガン乳がん闘病記編 第005話「 なにかある」
※2年前のクリスマス。一家に吹き荒れていたインフルエンザの嵐がようやく落ち着いてきた矢先に見つかった「胸のしこり」。

若くしてがんになるということ

このエッセイの特徴の一つは、若くして発症した「がん」の闘病記であること。

心疾患や脳血管疾患と並び、3大死因の一つである「がん」はどの年代で発症しても大変なのは変わりませんが、乳がんは特に働き盛りに多く見られることが多いがん。この本の主人公である30代のご夫妻は、小さいお子さんの子育て中ということで、育児や仕事をしながらの闘病を強いられました。

毎日の食事や掃除洗濯、幼稚園の送り迎え、そして治療のため1歳半の末っ子を預けなければならなくなった時に直面した待機児童の問題など、働き盛りであるこの年代ならではの直面する問題についても触れています。闘病中の方はもちろん、そうでない方にとっても共感できることがいっぱいです。

意外と知らない!乳がんの症状とその治療法

乳がんが大変な病気だということは知っていても、その内容や治療法について具体的な情報は知らない、という方がほとんどではないかと思います。

内容を知らないということは、恐怖感だけが大きくなり、より病気の「不安」を増してしまうこと。本書の中でも「敵(乳がん)を理解して、不安の原因をはっきりとさせることで、乳がんがどういうものかがぼんやり見えてきた」とおっしゃっているように、「知る」ことで初めて、乳がんにどう対応していくかが少しずつ掴めていくのではないかと思います。

この本の中では、乳がんの発症メカニズムや種類、進行度(ステージ)などの専門的な内容も漫画で分かりやすく紹介。その内容は実際に治療を行った主治医の先生が監修をされているのでより詳細な情報を知ることができます。

 「乳がん」の種類と進行度(ステージ)

「乳がん」と一言でいっても、実は早期がんである「非浸潤がん(ひしんじゅんがん)」とがん細胞が周りの組織に及んでしまっている「浸潤がん(しんじゅんがん)」の二種類に分けられます。

浸潤がん非浸潤がん

(画像引用)ちびといつまでも ガンガン乳がん闘病記編 第030話「 非浸潤がんと浸潤がん」
※がん細胞が組織内におさまっているかどうかが診断のポイントです。

また、がんの進行度はステージ(進行度)0~4に分類されますが、そのうちのステージ2はa、b、ステージ3はa、b、cとさらに細かく分けられており、これらは検査によって判定されます。

がんの種類やタイプ(後述)、ステージによって治療法が変わってくることもあるため、検査の内容や判定基準を知っておくことはとても大事。

この本では、漫画のほかに補足のための解説ページがあり、難しい専門的な医療情報を図解で分かりやすく説明しているので、これから乳がんについて知りたいという方にもお勧めです。

乳がんステージ

(画像引用)ちびといつまでも ガンガン乳がん闘病記編 第030話「 非浸潤がんと浸潤がん」
※症状が進行しているほどステージが上がっていきます。

 乳がん治療ってどんなもの?

乳がんは、「女性ホルモン」を栄養として増殖するものと「HER2たんぱく」というたんぱく質から増殖するものがあります。その中でも増殖スピードがゆるやかなものから活発なものまで5つのタイプがあり、タイプによっても使用するお薬が違います。

乳がんタイプ

(画像引用)ちびといつまでも ガンガン乳がん闘病記編 第069話「 1ヶ月健診」
※乳がんのタイプを知ることで、そのがんの特徴や効果的な治療法も分かってきます。

また、治療は抗がん剤などの薬物療法だけではなく、腫瘍を摘出する手術(全摘or温存)や、再発リスクを抑えるための放射線治療など、患者さんの状態に合わせ、複数の治療を組み合わせて行うケースが多くなります。

どのようなお薬を使い、どのような治療を組み合わせていくのか、その治療方針は主治医の先生によって決定されますが、治療内容や治療を受ける環境などに疑問や不安があるときは、転院やセカンドオピニオンが必要になることも。

大切な命を守り、患者さんにとってベストな治療を行うためには、お医者さん任せの受け身ではなく、自分でもリサーチをしていくことも大事。この本の中では、ママンさんの病院選びやその間の心境の変化なども詳しく紹介されていて参考になる部分がたくさんあります。

治療方針

(画像引用)ちびといつまでも ガンガン乳がん闘病記編 第039話「今後の治療について 」
※治療内容や治療期間は症状によって異なる場合もありますが、長期戦でいく心構えが必要です。

人間関係、情報との付き合い方、お金のこと……。闘病中の患者さんや家族の生活

がんの宣告で不安になるのは、治療内容と並んで、闘病中の生活がどのように変化していくのかということではないでしょうか?

身体だけではなく、心にも大きな負担がかかる闘病生活は、実際に体験した人とその家族にしか分からない苦労もたくさんあります。

本書では、ママンさんのがん治療が始まって一家の生活がガラッと変わっていく様子や、悩みながらもしっかりと現実を受け入れて治療に臨むママンさんの様子、そして、それを見守る作者さんの思いなどが細かく描かれています。

がん発覚で、人付き合いは変わる?

乳がんと分かった時、周囲に理解してほしいという気持ちと、病気を知られたくないという気持ち、少なからずどちらもあるのが普通ではないでしょうか?

感じ方は患者さんそれぞれ。どちらが正解というわけではありませんが、ママンさんは周囲に事実を知ってもらい、安心して治療を行うことを選択しました。

本書の中では、実家との付き合い方や周囲の人との人間関係などリアルなお話も盛りだくさん。無理して元気そうに振舞ったため、保育園の先生に元気だと誤解を受けてしまうというエピソードは、ついつい頑張ってしまう女性にはありがちなこと。共感できるという方も多いのではないでしょうか?

そして、意外と知らなかったのが、抗がん剤治療中にも体調の波があるということ。ママンさんの場合、治療の合間で体調の良い日は家族やママ友とランチに出かけることもできたそう。

リラックスして過ごす時間は、身体や心にもきっと良い影響があるはず。がんだからといって好きなことを我慢しなければならないわけではなく、むしろ、がんだからこそ、体調の良い時は楽しい時間を過ごす必要があるのかもと考えさせられました。

乳がんのことを知って距離を置く人もいる中で、ママンさんの場合は、周りの人にいつも通りに接してもらうことが嬉しかったそうです。

また、治療中もメイクやネイル、ウィッグなどおしゃれの研究をしていたママンさん。
がんだから「あれもダメ、これもダメ」ではなく、毎日を楽しくポジディブに過ごすことはできるというエピソードもたくさん紹介されているので、読んでいるうちに気持ちが明るくなる人も多いのではないでしょうか?

化粧

(画像引用)ちびといつまでも ガンガン乳がん闘病記編 第95話「 患者に見えない化粧」
※闘病中の気持ちを上げるためにもオシャレは効果的。抗がん剤で浅黒くなったお肌も丁寧なケアとママンさんの高度なメイクテクニックで前より若返って見えるくらいに?

インターネットや書籍、情報との付き合い方

闘病中、分からないことや不安なことは、ネットや本などで情報を探すことも多くなります。

病気を知るためにも情報収集はとても大切ですが、一つのサイトや本の情報をうのみにしてしまうのはとても危険。

本書の中でも、いくつかのサイトをチェックして、出典元などがはっきりしているものだけを利用することを推奨しています。

病院選びなどに役立つ口コミサイトも、良い口コミしか載せていない場合、情報が操作されている可能性も。ネガティブな情報も同じように掲載し、中立的な立場を守っているサイトを利用することを薦めています。

「乳がん」という命に関わることであるため、パニックになり、つい特定の情報に飛びついてしまいたくなることがあるかもしれません。しかし、そういう時こそ落ち着いて情報を判断する冷静さを忘れないようにしたいものですね。

乳がん治療にかかる費用は一体いくら?

やっぱり気になるのが費用のこと。がんの治療には多くのお金が必要です。
保険がきくもの、自費になるもの、治療内容によってかかる費用は異なりますが、治療期間が長くなるがん治療に経済面の不安はつきものです。

この本の中では、ママンさんのがん治療にかかった費用を公開。もちろん、患者さんの治療内容にもよりますが、費用を具体的にイメージすることができれば今後の対策も考えやすくなるもの。これから治療に臨むという方は必見です。

また、万一の時に役立つ医療保険やがん保険の比較や、高額療養費制度(所得に合わせて毎月の医療費の支払いの上限を定めている制度)など医療制度の情報も紹介しています。

費用を軽減することができる制度があることを知ると知らないでは大きな差。いざという時、心の余裕も大きく違ってくるのではないかと思います。

高額療養費

(画像引用)ちびといつまでも ガンガン乳がん闘病記編 第015話「 お金がかかる」
※何かとお金がかかる闘病生活。費用負担を減らせる制度はどんどん利用しましょう。

書籍「ちびといつまでも」が教えてくれること

同じように乳がんで悩む人を少しでも減らしたいという思いで始められたこのブログ。最初から最後まで、いいことも悪いことも包み隠さず(脱毛時の写真まで公開!)紹介してくれているこの本には、考えさせられ、気付かされることもたくさんありました。

 乳がんは早期なら完治も可能!検査の重要性

早期であれば乳がんは完治する可能性もありますが、早期はほぼ自覚症状がないため、なかなか自分では気付けないことが多いのも事実。

しこりに気付いた時点ではステージが進んでしまっているケースも多く、進行の早いがんであったママンさんの場合はがんが見つかった時、すでに「ステージ3c」に進行していました。

やはり、早期発見のカギは自覚症状が無かったとしても定期的に検診を受けること。マンモグラフィ超音波検査で少しでも早く細胞の変化に気付くことができれば、そのあとの治療には大きな差が付きます。

健康は当たり前ではない

この本の中で一番印象的だった言葉は「病は人の体を弱らせますが、病をきっかけに心が強くなる人もいます」という一文。闘病中もユーモアを忘れず、ひたすら治ることだけを信じて治療に取り組んだママンさんは本当に心の強い人なのでしょう。

一年半かけてポジティブに家族で乗り越えられた闘病の記録は、同じ境遇の方にとってはとても心強いもの。今現在、治療中の方はもちろん、ご家族や友人などに乳がんと闘っている人がいる方にとっても勇気付けられる一冊になることでしょう。

また、家族の「ありがたさ」を再確認することもできるこの作品。桜の季節、治療の大きな山を乗り越えた作者さん一家が、また無事に家族揃ってお花見しながらこれまでを振り返るシーンには深い感動を覚えます。

乳がんやそのほかの病気が、いつ自分や自分の大切な人の身に降りかかるのかは誰にも分かりません。
今は健康だという人にとっても、この本を読むことで、今一度、健康でいられることのありがたさを見直してみるきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

お花見

(画像引用)新ちびといつまでも おてんばムスメ編 A100 術後3年目の花見
※治療の山場を越え、家族で恒例のお花見。家族揃って桜を見上げるシーンに心が温かくなります。

※ママンさんの治療は今も継続中(今では、ピラティスやストレッチをするほどに元気に回復)。続きは作者さんのブログ「新ちびといつまでも おてんばムスメ編」で見ることができます!パパンさん、ママンさん、そして成長したお子さんたちをこれからも応援していきたいですね!

コミックエッセイ ちびといつまでも -ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節コミックエッセイ ちびといつまでも -ママの乳がんとパパのお弁当と桜の季節

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