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2018年3月22日更新

ピリピリ、ズキズキする痛みの原因は帯状疱疹後神経痛かも?症状・治療法・体験談

赤い発疹が神経に沿って帯状に現れ、強い痛みを伴う帯状疱疹は、皮膚の炎症が治まった後もいつまでも痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」という後遺症に悩まされることも!辛い帯状疱疹後神経痛発症のメカニズムや症状、薬物を中心とした治療法をご紹介します。
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帯状疱疹後神経痛アイキャッチ

日本人の5~6人に1人が発症すると言われている帯状疱疹

60代を中心に50~70歳の高齢者に多い皮膚疾患ですが、決して高齢者だけの病気という訳ではなく、睡眠不足やストレス、過労などで免疫力が落ちている場合にはどんな人でも発症する可能性があります。

帯状疱疹は、発症時の皮膚症状(発疹や水ぶくれ)と強い痛みが特徴ですが、皮膚症状が無くなった後もしつこい痛みが続く「後遺症」にも注意が必要です。

この痛みは「帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia:PHN)」と呼ばれ、帯状疱疹の合併症の中で一番多いもの。

人によっては何年間も辛い痛みに苦しめられ、日々の生活にも大きな支障をきたすことがあります。

今回は帯状疱疹後神経痛の原因や症状、治療法についてご紹介します。

1.帯状疱疹発症の原因と症状は?

帯状疱疹の原因は体内に潜伏している「水ぼうそうウイルス」

帯状疱疹発症の原因は、子供の時にかかった「水ぼうそう」のウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス:VZV)。

VZVウイルスは、水ぼうそうが完治した後も消滅せず、皮膚に出た発疹から神経を伝わって脊髄の近くの「神経節」という部分に潜伏しています。

普段は大人しくしていて体に影響を及ぼすことはありませんが、疲れや寝不足、ストレスなどがきっかけで免疫力が低下してくると再び活動が活発になり、増殖し始めます。

神経節内で再度活性化したウイルスは、知覚神経の中を通って表皮に到達するため、神経に沿って赤いプツプツとした無数の発疹や水疱が帯状に現れます。

脇腹背中などに発症することが多いですが、顔面神経三叉神経*1がある顔に症状が出ることもあります。

通常は、身体の左右どちらか側にのみ発症しますが、症状が重い場合は全身に症状が及ぶこともあります。

一度かかると免疫が出来るため、基本的に再発はないと言われていますが、発症後、数年経過して免疫力が弱まると、患者さんによっては再度発症してしまうケースもあるので注意が必要です。

また、帯状疱疹自体は他の人にうつりませんが、まだ水ぼうそうの免疫がない乳幼児に感染すると水ぼうそうとして発症する可能性があります。身近に小さなお子さんがいる場合は接触しないように気を付けましょう。

*1三叉神経(さんさしんけい)とは顔と頭を支配している神経のこと。脳神経の中で一番太いもので、ここに帯状疱疹ができると髄膜炎などを起こすこともあります。

帯状疱疹の症状(急性期痛):かゆみ、赤み、水ぶくれとかさぶた

帯状疱疹は、神経に沿って赤く盛り上がる発疹が特徴的ですが、初期の個数が少ない状態では、虫刺されと思いこんでしまうことも。

発症した患者さんの7~8割は、皮膚症状が出る数日前から患部に痒みやチクチク、ピリピリといった違和感や痛み(前駆痛)を感じており、同時に頭痛や胸の痛み、発熱などの症状を伴うこともあります。

赤い発疹は次第に透明な水ぶくれが集まった疱疹になりますが、それに伴い痛みも増すため、人によっては夜も眠れないほどの強い痛みを感じることもあります。

その後、1週間程度で黄色い膿を持った状態に変わり、徐々に表面が乾き、瘡蓋(かさぶた)化して終息します。

皮膚症状は2~3週間で治まることが多いですが、発症後なるべく早く(できれば72時間以内)、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル)を服用すると、進行が抑えられ、治療期間を短くすることができます。

併せて強い痛みには、アセトアミノフェンNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの鎮痛剤の服用や痛みを抑える注射(神経ブロック*2)で痛みを和らげる措置をとります。

*2神経ブロックとは神経や神経の周辺に局所麻酔薬を注射して辛い痛みを改善させる治療の事。(詳しくは3章で説明します)

帯状疱疹
(画像引用)社団法人日本皮膚科学会 帯状疱疹
※こちらのページでは帯状疱疹の原因や症状についてQ&A方式で分かりやすく説明しています。

帯状疱疹の後遺症(帯状疱疹後神経痛):ピリピリ・ヒリヒリ・ズキズキと痛む

皮膚の炎症が治まるにつれ、自然に痛みもなくなることが多いですが、患者さんの中には後遺症として痛みだけがいつまでも残ってしまうことがあります。

ピリピリとした刺すような痛みの他、ヒリヒリとした灼熱感やズキズキした痛み、電気が通ったような強い痛みが出るものまで現れる症状は患者さんによりさまざま。一度消えた痛みがしばらくたってからまた出現するケースもあります。

一見、傷のような外見上の変化がないため、患者さんは、その痛みを上手く周囲に理解してもらえずに辛い思いをする場合もあるようです。

このように、皮膚症状がなくなった後も3ヶ月以上続く痛みは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれており、帯状疱疹患者さん全体の約3%程度に発症すると言われています。(3ヵ月後で7~25%、6ヵ月後で5~13%の人が発症しているというデータもあり)

(参考)日本皮膚科学会 ヘルペスと帯状疱疹 
(参考)疼痛.jp 帯状疱疹後神経痛
※帯状疱疹後神経痛を始めとするさまざまな痛みの情報サイトです。
(参考)高齢者の帯状疱疹後神経痛 
※こちらのページでは高齢者の帯状疱疹後神経痛の症状や注意点などを分かりやすく解説しています。

2.帯状疱疹後神経痛はなぜ起こる?

帯状疱疹後神経痛発症の原因とメカニズム

発疹が出る前の「前駆痛」や、発疹や水ぶくれによる「急性帯状疱疹痛」は、「侵害受容性疼痛」と言われる痛みで、皮膚や神経に炎症が起きることによって発生します。

それに対して帯状疱疹後神経痛は、「神経障害性疼痛」と言われ、神経に障害が起こることによって生じる痛み。急性期の炎症により、正常だった神経繊維がウイルスによって傷つけられ、破壊されたことで発生します。

このように急性期の痛みと帯状疱疹後神経痛は全く別の原因で起こる痛みであり、発症のメカニズムも治療法も異なります。

そのため帯状疱疹後神経痛は、急性期の鎮痛に使われるアセトアミノフェンやNSAIDsといった一般的な鎮痛薬では効果が低く、症状が長引くことがあります。

帯状疱疹後神経痛の症状・体験談

帯状疱疹後神経痛の症状は患者さんによって異なり、以下のような症状が複数混ざって発症する場合もあります。

痛みがずっと持続するケースや断続的に現れるケースなど、症状の現れ方にも個人差があり、時間の経過とともに痛みが変化していくことがあるのも大きな特徴です。

≪帯状疱疹後神経痛に見られる主な症状≫

  • チクチク針で刺すような痛み
  • 締め付けられるような痛み
  • ヒリヒリ、ズキズキする痛み
  • 火傷のような灼熱痛
  • 電気が走るような痛み
  • 重苦しい痛み
  • アロディニア(少し触っただけでも痛みを感じる)
  • 知覚低下、感覚鈍麻(痛み、触覚、熱い冷たいの感覚が低下)

現れる症状の中には、皮膚の感覚が鈍くなる「知覚低下・感覚鈍麻」や、ちょっと触れただけで痛みを感じる「アロディニア」といった感覚の異常も含まれます。

これらの症状は神経が正常に働かなくなってしまったことで、脳に間違った情報が送られ、本来、感じることのない「異常な感覚」や「痛み」を過敏に感じてしまう事が原因だと考えられています。

【体験談1】発疹が消えても無くならない痛み。ピリピリと焼けるような強い痛みで明け方、目を覚ましてしまうことも。

70歳になる義母が帯状疱疹を発症しました。
病院で抗ウイルス剤をもらって帯状疱疹自体は一週間ほどで治ったのですが、皮膚の発疹が治っても、まだ痛みが走ると言い出しました。帯状疱疹は右肩から脇腹にかけてのものでしたが、本人が言うには、肩が上がらないくらいピリピリと焼けるような痛みで、特に、明け方、強い痛みを感じて目覚め手そのまま眠れなくなってしまうということでした。
病院で調べてもらったところ帯状疱疹後神経痛だということで、治療を始めることになりました。
しかし、この帯状疱疹後神経痛は鎮痛剤の効果がほとんどないというもので、とりあえずこの激しい痛みを何とかするという治療方針で進められていきました。この痛みを止める方法は個人によって違ってくるので、試行錯誤で合うものを探すことになります。

義母の場合は抗うつ剤が体に合ったようで、飲み始めて痛み自体は取れないけれど、ずいぶん楽になったといっていました。うつ病でもないのになぜ抗うつ剤が帯状疱疹後神経痛に効果があるのか、疑問に思ったので先生に聞いてみました。
簡単に言うと抗うつ薬に含まれる「塩酸エミトリプチリン」という成分が痛みに対する感受性をコントロールして痛みを感じにくくする効果があるそうです。
日本ではこの成分は鬱の薬に分類されていますが、アメリカやヨーロッパでは帯状疱疹の痛みを取る薬として一般的なんだとか。

気分が楽になったせいか、帯状疱疹後神経痛になってから閉じこもりがちだった義母も、温めると痛みが減るということもあって、お友達と温泉に出かけるようになりました。

(引用)抗うつ剤で痛みをコントロールして付き合う帯状疱疹後神経痛。

高齢者、皮膚症状がひどかった人は要注意!発症リスクが高い人は?

全体的に体の免疫力が弱まっている 60歳以上の高齢者の患者さんの場合、帯状疱疹後神経痛に移行してしまうケースが多く見られます。

また、急性期に眠れないほどの激しい痛みがあった方や発疹がひどかった方、アロディニアや知覚の異常の症状があった方は、神経の受けているダメージがより大きいため、発症リスクが高まります。

その他、がん治療などで免疫を低下させる治療(放射線治療など)を受けている方も発症しやすくなります。

帯状疱疹後神経痛を予防するためには、ウイルスによる神経節の損傷を防ぐことが重要

炎症が広がらないよう、なるべく早く治療を開始して痛みをコントロールすることが大切で、治療が遅れると若い人であっても発症するケースがあります。

【体験談2】30代で発症した帯状疱疹後神経痛。ストレスがあるとピリピリした痛みが出ることも。

ある日、お尻に傷がある事に気づきました。
自転車で遠出する事が好きだったので、擦れたのかなと思って気にしていませんでした。

ところが、その傷が発疹になり、性器に水ぶくれが。
これはおかしい、もしかしたら恋人から性病でもうつったのではないか?
そう思った私はインターネットで調べて、帯状疱疹ではないかと疑いました。

そこには一日でも早く抗ウイルス薬を飲むように書かれていましたが、休日だったので休日診療所など行かずに明日の朝一番に行こうと思いました。
これが、今から考えると最悪な決断となりました。

皮膚科に行った時には水ぶくれや発疹が大きくなり、あわてて薬を飲み始めて発疹はしばらく経って治まったものの、痛みは消えず。
すぐに、技術の良さという視点で調べた国立(くにたち)のからさわクリニックへ。

そこで硬膜外ブロック注射を受けているうちに、痛みはある程度落ち着きましたが、完全には治らず、お尻の潰瘍も跡が残りました。
後遺症の、帯状疱疹後神経痛です。
今でも、ストレスがあるとピリピリ痛み出します。
高齢者に多い後遺症なので、医師や看護師は、30代で帯状疱疹後神経痛になった事に驚いていました。

(引用)高齢者に多い後遺症「帯状疱疹後神経痛」を、30代で発症。

上記の方は30代という若さであるにもかかわらず、帯状疱疹後神経痛を発症してしまいました。

皮膚の違和感や発疹、痛みなどがあり、帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛が疑われる時は少しでも早く医療機関を受診するようにしましょう。

3.帯状疱疹後神経痛の治療

痛みが続く時はペインクリニック(麻酔科)へ

皮膚疾患である帯状疱疹は、皮膚科で治療を受けることができます。

しかし、皮膚症状がなくなった後も激痛がいつまでもひかない時や、一旦消えた痛みがぶり返したというような場合には、帯状疱疹後神経痛に移行してしまう可能性が高いため、「痛み」を専門的に治療するペインクリニック(麻酔科)での治療を考えましょう。

ペインクリニックでは、痛みをさまざまな角度から総合的に診断し、薬物療法神経ブロック療法、理学療法、心理療法など、痛みを改善させるための治療を組み合わせて行っていきます。

帯状疱疹後神経痛の症状は患者さんによって異なるため、必ずこれが効くという絶対的な治療法が確立されているわけではありません。

時間が経っている場合ほど難治性で完治は難しくなりますが、少しでも痛みを減らし、患者さんの生活の質(Quality of life:QOL)を高めるということを目標に、患者さん一人一人合った方法を探し、オーダーメイドな治療を行っていくことになります。

帯状疱疹後神経痛治療法

(図)帯状疱疹後神経痛で行われる各種治療法 Calooマガジン編集部

治療法1:薬物療法(リリカ・トリプタノール・ノリトレン・ノイロトロピン)

帯状疱疹後神経痛の治療の基本は、お薬で痛みをコントロールする「薬物療法」。

神経性の痛みである帯状疱疹後神経痛は、NSAIDsと言われるロキソニンなどの一般的な鎮痛薬ではあまり効果がありません。

日本ペインクリニック学会が作成した「神経障害性ガイドライン」では①神経障害性疼痛治療薬、②三環系抗うつ薬、③ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液という3種類のお薬を第一選択薬(まず最初に投与する薬剤)として推奨しており、それぞれのお薬を単独または併用しながら、患者さんに適したお薬の使い方を探っていくことになります。

①神経障害性疼痛治療薬 プレガバリン(商品名:リリカ)

「神経による痛みの治療」に使われるお薬で、帯状疱疹後神経痛の治療には健康保険が適用されます。

神経の痛みは、痛みを伝える神経伝達物質が過剰に放出されることによって生じますが、リリカは脳内の神経伝達物質の過剰放出を抑える働きがあります。

ただし、眠気やめまい、ふらつき、意識消失の副作用が起こる場合があるため、服用時には車の運転などは控え、特に高齢者の場合は転倒にも気を付けましょう。

副作用を極力抑えるため、最初は少量から服用を始め、お薬に慣れてきてから少しずつ量を増やし、患者さんに合った適量を見つけます。

また、薬の増量時や長期間の服用で、体重が増加するケースもあります。日頃からご自身で食事や運動などで体重コントロールに気を付けるようにしましょう。

腎臓が悪い方、透析を受けている方、心臓が悪い方、妊娠中または授乳中の方や他のお薬を服用している方は、服用前に医師や薬剤師に相談しましょう。

(参考)おくすり110番 アミトリプチリン 
※こちらのサイトは医療機関で処方されるお薬の詳しい情報を見ることができます。

②三環系抗うつ薬 アミトリプチリン(商品名:トリプタノール)、ノルトリプチリン(商品名:ノリトレン)

本来はうつ病の治療薬であり、鎮痛剤ではありませんが、神経伝達物質の細胞への取り込みを阻害する働きがあり、痛みを感じにくくする経路(下行性疼痛抑制系)を活性化する効果があるため、鎮痛補助薬として使用されています。

アミトリプチリンはこれまでうつの治療薬としてのみ保険適用されていましたが、2015年8月から鎮痛の有効性も新たに認められ、帯状疱疹後神経痛を含む「末梢性神経障害性疼痛」も保険適用できるようになりました。(詳しくはこちら

前出の体験談1の患者さんは、帯状疱疹発症以来、痛みのため閉じこもりがちになっていましたが、このアミトリプチリンの服用で痛みが改善でき、外出できるまでに回復されました。

ただし、口の渇きや便秘、眠気、ふらつきなどの副作用が出ることがあるため、アミトリプチリンの高齢者への使用は特に注意が必要で、日本ペインクリニック学会の治療指針では、より副作用の軽いノリトリプチリンの使用を推奨しています。

(参考)おくすり110番 プレガバリン 
(参考)おくすり110番 ノルトリプチリン

③ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(商品名:ノイロトロピン)

あまり聞きなれないお薬ですが、「ワクシニア」というウイルスをウサギの皮膚に投与した時に作られる炎症部分から取り出した成分を、分離・精製したお薬です。

痛みを感じにくくする経路(下行性疼痛抑制系)を活性化し、痛みを抑える効果があります。

心配されるような重い副作用もほとんどなく、20年以上も使用されている安全性の高いお薬であり、帯状疱疹後神経痛の治療には保険適用が認められています。

(参考)おくすり110番 ノイロトロピン 

ここまで、ガイドラインで推奨されているお薬についてご紹介しましたが、これらを試しても痛みのコントロールが難しい場合には、その他の抗けいれん剤などのお薬(保険適用外)を試す場合や、「オピオイド」という医療用麻薬を使用する場合もあります。

オピオイドにはモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルパッチ、トラマドールなどたくさんの種類があり、その鎮痛作用はとても強力。

しかし、「吐き気・嘔吐、便秘、眠気などの副作用が現れる事がある」「一部のオピオイドには薬物依存の危険があり、長期間使用した場合の効果や安全性が十分でない」などの理由から、他の薬剤を用いても痛みがおさまらない場合にのみ使用が検討されます。

(参考)LYRICA-navi.jp リリカ 
※こちらのサイトでは神経障害性疼痛治療薬「リリカ」について分かりやすく解説されています。
(参考)第Ⅲ章 各疾患・痛みに対するペインクリニック治療指針 Ⅲ-A. 帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛
※上記のサイトでは帯状疱疹後神経痛の治療指針を見ることができます。
(参考)神経障害性疼痛の薬物療法 – 日本ペインクリニック学会
※こちらのページでは神経障害性疼痛の治療に使われる薬物の作用や選び方などについて詳しい情報を見ることができます。

治療法2:神経ブロック療法

神経ブロック療法とは、神経や神経の周辺に局所麻酔薬を注射して辛い痛みを改善させる治療法。

痛みが伝わる経路をブロックすることで痛みを和らげる効果がある他、血行を良くして筋肉のこわばりも改善します。

特に発症から1年以内の早期の帯状疱疹後神経痛に行うと効果が高いと考えらえています。

また、神経ブロックには神経痛発症自体を予防する効果もあることから、日本ペインクリニック学会の治療指針では帯状疱疹の急性期から積極的に受けることを推奨しています。

神経ブロックは、単独での治療というよりは薬物療法と並行して行うことが多く、何度か回数を重ねて継続する必要がありますが、治療は保険が適用できます。

神経ブロックにはいくつかの種類があり、痛みの種類や部位、症状によって使い分けられており、代表的なものに①硬膜外ブロック、星状神経節ブロックがあります。

①硬膜外ブロック

背骨の腰の辺りに注射をし、脊髄を覆っている硬膜の外側にある「硬膜外腔(こうまくがいくう)」に局所麻酔薬を入れます。

一時的に神経をブロックして、脊髄から脳に痛みが伝わらないようにすることで、痛みを緩和します。首~足先までの痛みに効果があります。

硬膜外ブロック

(画像)硬膜外ブロック Calooマガジン編集部作成

②星状神経節ブロック

首の付け根、喉の辺りにある「星状神経節(せいじょうしんけいせつ)」という交感神経の節に局所麻酔薬を注射します。

交感神経の興奮を抑え、上半身の血管が広がって血の巡りを良くするため、痛みを和らげることができます。顔や頭、手などの上半身の痛みに効果があります。

星状神経節ブロック

(画像)星状神経節ブロック Calooマガジン編集部作成

治療法3:イオンフォトレーシス

局所麻酔薬を浸透させたパッドを患部に貼って弱い電流を流し、イオン化した薬剤を皮膚に浸透させる治療で、痛みの緩和に効果があります。

衣服が擦れるだけでも痛みが出るなど表皮に強い痛みが出ている場合にも行うことができます。

また、治療時の痛みや副作用の心配がないため、高齢者の方や、神経ブロックの注射に抵抗がある方でも安心して治療を受けられます。

発症後1年以上経っている難治性の帯状疱疹後神経痛にも効果があるのも大きなメリットですが、健康保険が適用されていないため自費治療になります。

(参考)かわたペインクリニック通信vol.43 イオンフォトレーシスについて
※イオンフォトレーシスのしくみや帯状疱疹後神経痛への効果について解説されています。

治療法4:レーザー治療

神経痛が起こり、筋肉がこわばっている患部にごく弱いレーザー光を照射する治療で、血行を改善して痛みを緩和します。

特に痛みが強い患者さんが、通常の薬物療法などに追加して行うことが多い治療です。

大きな副作用がなく、体の様々な部位の治療ができるのがメリットですが、健康保険は適用外のため自費治療になります。

治療法5:漢方薬(桂枝加朮附湯・牛車腎気丸・抑肝散)

帯状疱疹後神経痛の治療には漢方薬が使われることもあり、健康保険も適用されます。

漢方薬は継続して服用することで、患者さん自身の本来持っている自然治癒力を高めるのが目的。

即効性はありませんが、効果が穏やかなため、西洋薬に比べると副作用も少ないことがメリットです。

患者さんの症状や体質によってお薬は変わりますが、以下のようなお薬が良く使われます。

①桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

(画像引用)ツムラ 桂枝加朮附湯

冷えがある方の神経痛や関節痛などに効果があり、帯状疱疹後神経痛にも使用されることがあります。

②牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

牛車腎気丸

(画像引用)ツムラ 牛車腎気丸

体力が低下していて、疲れやすく、腰から下の冷えが気になる方のしびれ、下肢や腰の痛み、むくみ、排尿障害などに使用されるお薬。

腰周辺の帯状疱疹後神経痛に対して効果があるとされています。

③抑肝散(よくかんさん)

抑肝散

(画像引用)ツムラ 抑肝散

体力は中程度で、怒りっぽい、興奮しやすい、イライラなどの症状のある人に使用します。

神経の興奮を抑える作用や神経細胞を保護する作用があるため、帯状疱疹後神経痛の鎮痛にも効果があります。

治療法6:その他(温熱療法・電気刺激療法・運動療法・心理療法)

上記のような治療の他にも、患部を温めて血管を広げ、痛みの原因となる物質の除去する「温熱療法」、低周波の電気刺激により、痛みを伝える神経の働きを抑える「電気刺激療法」、ストレッチや筋力を増やす訓練で、筋肉の緊張をほぐして血行を良くし、痛みの原因物質を取り除く「運動療法」、痛みが長引き心因性の問題が考えられる場合は「心理療法」など、患者さん一人一人に最適な方法が選択され、組み合わせて治療が行われることもあります。

帯状疱疹後神経痛治療法

(画像)ペインクリニックにおける帯状疱疹後神経痛の主な治療法 Calooマガジン編集部作成

(参考)日本皮膚科学会 ヘルペスと帯状疱疹
(参考)日本ペインクリニック学会 神経障害性疼痛の薬物療法
(参考)疼痛.jp 帯状疱疹後神経痛

4.帯状疱疹後神経痛の予防のためにできること&症状との付き合い方

早期発見・治療を心掛ける

一度、帯状疱疹後神経痛を発症してしまうと痛みを完全になくすことは困難です。

将来、辛い痛みを残さないためには、やはり「神経痛の発症を予防すること」が一番。

そのためには、一日でも早く抗ウイルス薬による治療を開始し、症状の進行を抑えることが重要です。

併せて鎮痛薬や神経ブロックで、早いうちから痛みを抑えることができれば、神経痛が残る確率はさらに低くなります。

発疹や痛みなど違和感があり、帯状疱疹が疑われる時は、なるべく早く医療機関を受診するようにしましょう。

「水痘帯状疱疹ワクチン」の接種を検討

今現在、帯状疱疹後神経痛を予防するための有効な方法は「水痘帯状疱疹ワクチン」の予防接種しかありません。

アメリカで60歳以上の高齢者を対象に行った調査では、ワクチン接種によって帯状疱疹の発症が51.3%減少、帯状疱疹後神経痛については66.5%減少したという報告があり、すでにアメリカでは60歳以上の成人に対して、帯状疱疹ワクチン(Zostavax)の1回接種が定期予防接種となっています。

日本の場合、Zostavaxは認可されていませんが、2016年3月に、水ぼうそうのワクチンである「乾燥弱毒生水痘ワクチン」に、「50歳以上の人に対する帯状疱疹予防の効果がある」として効能が追加されました。

予防接種を実施している医療機関でワクチンを受けることは可能ですが、保険適用にはなっていないため、接種は自費で行うことになります。

接種の費用は6,000円~10,000円程度と医療機関によって幅があり、決して安い金額ではありませんが、いつ罹るか分からないリスクを減らせる安心感は何物にも代えがたいもの。

高齢の方、持病があり免疫の低下が心配な方は、一度、実施医療機関に問い合わせてみてはいかがでしょうか?

(参考)横浜市衛生研究所 水痘(水疱瘡)・帯状疱疹について
※こちらのページでは水ぼうそうや帯状疱疹についての詳しい情報を見ることができます。
(参考)成人帯状疱疹ワクチン今後の展望 本田まりこ先生 東京慈恵会医科大学皮膚科客員教授/まりこの皮フ科院長
※こちらのページでは帯状疱疹の予防ワクチンの有効性や今後の展望についての詳しく解説されています。
(参考)乾燥弱毒生水痘ワクチン
※帯状疱疹の予防にも使うことができる乾燥弱毒生水痘ワクチンの説明書です。

痛みにとらわれ過ぎない!日常生活における注意

残念ながら、すでに帯状疱疹後神経痛が残ってしまったという方でもあきらめることはありません。

医療機関での治療を続けることはもちろんですが、ご自身でも日々の生活を見直すことで、症状を改善することは可能。痛みを減らすためにも以下のような点に気を付けてみましょう。

≪日常生活における注意点≫

  1. 熱中できる趣味を持つ
  2. 入浴して体を温め、血行を良くする
  3. 体を冷やさない
  4. 疲労やストレスが溜まり過ぎないように休養を取る
  5. 患部に刺激をあたえない

痛みが長く続くと心理的ストレスも大きくなり、痛みをより強く感じてしまうこともあります。

痛みにとらわれすぎないよう、好きなことをして気を紛らわせ、上手に痛みをコントロールしていきましょう。

治療の効果が出てくるまでは時間がかかることもありますが、諦めずに根気強く治療に取り組んでいく事が大切です。

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